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放課後。
刑斗たちが住むここ海桜町は、海に程近い場所に位置する片田舎だ。
とは言っても田舎と聞いて人が想像するような田園風景が広がっているような田舎ではなく、都市とは言えない程度で、しかし町と呼んでも差し支えない程度に発達した文化圏である。
潮風の影響で女子は肌や髪を気にしているが、男子であり更に元々自身の容姿に欠片ほどの興味も無い刑斗からすれば、潮風など物が傷みやすくなる以外に気にかける点は無かった。
刑斗の自宅は学校から徒歩十五分程の場所にある新しくも古くもないアパートである。 訳あって一人暮らしの身だが、別に両親と死別している訳ではない。
茜色に染められる道を己の影をぼんやりと眺めながら帰路に着く刑斗は、その手に通学鞄ともう一つ、近くのスーパーのビニール袋を提げている。
昨今ビニール袋の使用を控えるようにと言われているが、彼はそんな事に気を使うようなエコロジー精神は持ち合わせていなかった。 うっすらと透けて見える野菜や肉類が揺れ、袋が一歩ごとにガサリガサガサと耳障りな音を立てる。
今彼が歩いているのは閑静を二乗したような静けさに包まれる住宅街の細道だが、未だ午後五時にもならないからか帰宅を急ぐ車や学生の姿は無い。 余談だが彼は帰宅部である。
それでも人っ子一人いない、と言うのは些か奇妙かも知れない。 この時間なら少なくとも子供なら外で遊んでいても良いようなものだが。
だがそれは仕方無い事なのだろう、と刑斗はやはり薄ぼんやりと思い耽る。 ここ最近は何かと物騒だ、子供を心配する親が外で子供を遊ばせないようにしているのだろう、とも無駄な予想もする。
何故なら最近この辺りで奇妙な都市伝説──に、よく似た連続殺人が起こっているのだから。
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