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――
「フゥ――…。それでは、お話しましょうか」
私はため息をつくと土方さんに向かい姿勢を正した
「……おぅ」
土方さんもそれで察したのか猫背気味の背中を伸ばす
「何から話せばいいですかね……そうですね、取り敢えず
私は150年程先の平成という世から時空を越えてやってきたようです。」
「…………………………は?」
今、すんごい阿呆ヅラなんだけど…
爆笑したいくらいに。
「喧嘩売ってんのか?真面目に話せ」
彼の鋭い目が私を睨む
「私は至って真面目です。それに…
一番信じられないのは自分です。家にいて願い事をすると雨が降り出して外にでてみると雷に撃たれて……
気付いたら知らない部屋で寝てたんですから…」
花香は彼に真っ直ぐ向けていた目を伏せた
その表情はどこか悲しげだった
それを見た土方は額に寄せた皺を少しばかり弱め口をひらく
「証拠があれば、信じてやらなくもねぇぜ?」
「証拠、ですか……」
「あぁ」
「…生憎、私はなんとなく外に出たらこっちに来たので、物的証拠はありません。
ですが、未来の知識という証拠ならあります。
それで宜しければお話ししますが…」
「……話せ。」
土方の態度に花香はムッとしたがこらえ口を開いた
「幹部しかしらない話なら……芹沢さんの暗殺。ですかね?」
「ッ!……なんでそれを?」
土方は一瞬動揺したかと思うが、すぐに鋭い目つきにもどった
……さすが副長、というとこか
てゆーか…
芹沢さんの暗殺を考えてるってことは今は文久3年の夏か…
「未来の知識です。」
「…そんなの、間者を送ったら分かるかもしんねぇだろ……」
「だとしたら、あなた方の技量はたかが知れてますね。」
「なんだと…?」
「だって、間者ごときにも気付けないなんてそれほど弱い証拠ですよね?」
「馬鹿にしてんのか?」
「間者の話を先に出したのは土方さんですよ。わたしはその話に乗っただけです。
それに……この壬生浪士組の人がそんな弱くないって私だって分かってますよ。」
「……未来のやつはみんな壬生浪士組に詳しいのか?」
しばしの沈黙のあと土方はおもむろに口を開いた
「いえ、わたしが好きなだけです。みなさんの志に惚れました。」
私はそう言って笑みを浮かべた
「お前は願ったらここにいたと言ったな?……何を願ったんだ?」
「…答えなきゃ駄目ですか?」
「当たり前だろ」
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