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一歩一歩踏みしめるあたしの体が何かに当たった。
遮るものはないはずなのに……目をゆっくりと開けるけど、夕日が眩しくて影になってしまい、正体がわからない。
「何してるの?」
静かな深い声が響いた。その声で、目の前にあるものが人だとわかる。
その人に肩を掴まれていたので慌てて振りきる。逃げようとするあたしの腕が、大きな手で掴まれた。
「逃げんな、おまえ、何で死のうとしたんだよ。」
「離して、あなたには関係ないじゃない!」
「教えてくれるまで離さない。」
若い男の人の声があたしを制する。それでもあたしは落ち着きなんかしない。
身内でないかぎり、人に体をさわられるのは嫌だ。倒されて、殴られて、蹴られて……
あたしは恐怖のあまり悲鳴をあげた。
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