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「済まない」
克正が文句を言おうとしたのを遮って、諌早は謝ると場を取りなして長官の言葉を聞いた。
「……最近の鬼の騒動が大きくなるばかりで、帝から検非違使全員に勅命が下った」
橘の話は折しも本題に入っている。
「帝は今回鬼を仕留めた者に、褒美として昇進をさせるという」
橘がその言葉を口にした時、一同が目立ってどよめいた。
「皆の者、鬼討伐に今一層の力を入れ、都に平安を取り戻すように。そして今回から相談役として陰陽師の叶雅守が警備に協力してくれることになった」
橘の紹介を受けて、一同が見守る中雅守が挨拶を始める。
諌早の位置からでは前の人間の頭で雅守の姿が見えにくいが、声の様子からするとまだ相当に若いようだ。
声色も高く、その割には落ち着いた不思議な気配がする。
「叶雅守です。――早速ですが、今回の鬼は単独だと思っています」
挨拶も手短に、雅守は早速話の核心から話を始めた。
一同は押し黙って聞き入る中、諌早は思いもしない雅守の確信的な言葉に惹かれていた。
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