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「鬼は本来血肉を食べません。しかし今回のように都に降りて来て人を襲い、肉の味を覚えた鬼は凶暴だという事を覚えて置いて下さい」
雅守はそこまで告げると、一同を見回してふと、諌早で視線を止めた。
「今宵から私も見回りに参加します。よろしくお願いします」
視線を諌早に向けたまま、雅守は頭を下げると橘と共にその場を去って行った。
「無表情な男だな」
解散していく一団に紛れながら、克正は早速雅守に対して抱いた印象を諌早に告げてくる。
「陰陽師っていうのは皆あんな感じなのか?」
「知らん」
「それに鬼の事よく知っているって口ぶりだったよな」
「みたいだな」
「……どうした諌早?」
諌早の返事が曖昧なことに気付いて、克正は不思議そうに様子を窺ってきた。
「いや……別に……」
「まあいい。非番だし、今夜はゆっくり出来るだろう。明日からまた忙しくなるんだ。休んで明日からに備えないと」
「いや、ちょっと思う所があるんだ。ついでだし警備に出ようかと思う」
「……昇進狙いか?」
克正がからかったように声を掛けた時、諌早は後ろから人がぶつかって来た勢いに押されて、前に躓いた。
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