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「今はすっかり。人間のように貧弱には出来ていないんでね」
そう言って右肩を不自由なく動かして見せる。
「昨日の礼を言いに来たんだ。それとお前を見込んで協力してほしい事があって出て来たんだよ」
二人が足を止めた先は川岸で、目の前の川が太陽の光を水面に反射して輝いていた。
「私の名前は、桜鬼(るき)」
鬼――桜鬼は自らの名前を明かし、諫早に向き直った。
「探している奴がいるんだ」
「探している奴、とは?」
言葉を止めた桜鬼に、諫早は興味を引かれたように言葉を繰り返す。
「……最近、夜毎に人肉を食らい殺す鬼がいるのは、検非違使のお前は知っているだろう?」
「ああ。警備が強化されたのもそれが原因だ」
「私が探しているのは、その鬼なんだ」
「……やはりお前ではないのだな」
自分の勘が当たっていた事に、諫早は内心で安心しながら桜鬼に笑いかける。
「その鬼の名前は屍鬼(しき)。私の――知り合いだ」
桜鬼は一度言葉を止めて、言いにくそうに溜め息をつき、そしてまた先を続けた。
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