護るために

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黒迷の二人は楽屋に戻り煙草を吸っていた。 無言と煙草の煙が何処と無くどんよりとした空気を演出している。 澤口の今の現状を考えると自分たちはあまりにも無力で、あの時彼は「助けてくれてありがとう」と言ってくれたが、自分たちは何も助けられていない。 ただあの場面を止められただけで現状は何も変わっていないのだから。 「…なぁ」 小杉が煙草の煙を吐き出しながら吉田の方に向き直った。 吉田は灰皿に煙草を押し付けながら小杉の顔を見つめた。 「このまま何もせんでおれば…俺らはこれから先も食いっぱぐれる事はないわな」 「小杉?」 「これから先も澤口先生がずっと苦しむんと仕事がなくなんの、お前やったらどっちがええ?」 何かを決意したかの様な小杉の言葉に、吉田は意味ありげに唇の端を吊り上げた。 「愚問やな」 「行くか」 「ああ」 二人は顔を見合わせて頷き合い楽屋を出ていった。
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