護るために

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薄明かるいホテルの部屋。 キングサイズのダブルベッドを挟んで向き合う澤口と三十代程の若い男。 ベッドサイドの机にはB5サイズの茶封筒が無造作に置かれていた。 それを無表情に睨む澤口を男はねめつける様に見つめていた。 「約束は…守りますね」 「ええ、私と寝てくださればその中の事実は公表せず、私の中に留めておきますよ」 一見誠実そうなその笑顔も、実は周囲を欺く為の物だとわかっている。 わかっているからこそ、澤口はため息を吐きながらそっとネクタイを緩めた。
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