第一章

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そんなことを言ったって、わたしはあんたを知ってるワケだし……とかそんなことを普通に言ってくるもんだから、俺の溜め息はどこへ行くでもなく空気と混じる。 そんなどうでもいい会話を聞き流していると、次の授業が始まるチャイムが耳に入ってきた。 なんというか、俺にはよく分からないが、綾瀬川は優等生ぶりたいのか知らないけれど、まるで別人のように前を向いて授業を受ける姿勢に切り替えている。 この後のことも、出来ることならば詳しく述べていきたいところだが、それはそれで面倒くさいので適当に端折らせてもらう。 簡単に言うと、学校は普通に終わって普通に家に帰った。 家に帰った俺が何をしたのかと言うと、まず着替えた。 いやいやそんなこと聞いてんじゃねえんだよ。とか思った奴のために、望んでいたであろう答えを教えてあげよう。 自分の部屋で、押し入れにあるであろう小学校の卒業アルバムを探していたが、実際あったのは勉強机の本棚だった。 とにかく。 俺は小学校の卒業アルバムで、あいつ──つまり綾瀬川の存在を確かめていた。 「六年……二組だったっけな」 あまり印象に残っていないながらも、なんとか曖昧な記憶を蘇らせて写真を探す。 記憶通り、俺は六年二組で出席番号一番、つまり一番最初にある生徒の写真は──。 ──綾瀬川姫乃。 聞き覚えのある、というか新鮮味溢れる名前がそこにはあった。 つか。 「本当に同じクラス……というか小学校だったのか」 そんなことに驚きを感じつつ、しかし何となくそんな予感はしていたので思ったよりは冷静である。 まあ冷静さを失う理由は見つからないんだけどな。
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