第一章

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とはいえ。 同じ小学校だということが発覚したところで、同じクラスだったというところで、俺の記憶の引き出しの中に奴の存在がないのは事実なわけだ。 まさか中学校に上がってから、脳内の綾瀬川に関する記憶だけを消去されたわけでもあるまいし。 なにせ、そんなことをされた記憶なんかない。いや、そんなことをされた記憶すら消されているのかもしれない。 ……。 止めよう、キリがない。 そもそも、同じ小学校で同じクラスだったからといって、だからなんなんだという話だ。 俺だって何を真剣に卒業アルバムを見ているんだと、改めて思う。 所詮、あいつは同じクラスのクラスメートに過ぎない。 それ以上でもそれ以下でもないわけで、俺の人生にとってその程度の存在でしかないはずだ。 つまり。 「止めた」 諦めた。 これ以上はもう無駄だと判断した俺は、卒業アルバムを元あった場所に戻した。 長いようで短い人生だ。極力無駄なことは避けていきたい。 それにしても、考えることは百八十度変わってしまうのだけれど、俺の部屋は普通過ぎないだろうか。 勉強机が部屋の角と合わさるようにあり、その横には漫画やらがある本棚がある。 さらに横には洋服タンス。勉強机とは対照的に角に合わせたベッド。 その程度。 あとはまあ、妹が勝手に置いていくぬいぐるみとか。俺はインテリアなんだと自分に言い聞かせて放置している。
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