第一章

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「よし」 せっかくの暇な時間を、何かしら有意義に使うべきだと考えた俺は決心した。 高校生にもなったんだ。ここは気分を一新して、部屋の模様替えでもしようじゃあないか。 立ち上がった俺はやる気を見せつけるように、着ていたロングTシャツの袖を肘あたりまで捲った。 まずは机の位置を変えてみるか。それともベッドにしようか。いやいやここは本棚の位置を……。 いや待て俺。考え直そう。中学三年間、あらゆる模様替えを試してきた結果、最高の形として出来上がったのが現在の部屋だ。 それを適当に、無計画で動かしたりすると悲惨なことになりかねない。 今日のところは止めて、また今度設計図から考える時間がある時にやるとしよう。 そんな感じで、俺は暇な時間を無駄に過ごしてしまったと思いながらも時間が経つのを感じつつ、晩飯の準備を手伝いをしろという母さんの言葉に、肩を落としながら台所に向かった。 ……。 …………。 ビデオやDVDについている早送り機能然り、漫画や小説の『──時間後』や『──日後』、はたまた『それからしばらく経った時のこと』など、時間を短縮するような技法然り。 あれが羨ましいと思うので、実際やってみていいだろうか。 ──翌日。 すまないな。俺はこう見えて面倒くさがりなんだ。 昨日の夜の、平凡な家庭の風景を伝えていくなんて面倒極まりない。 いや逆に、聞きたいだろうか。 ──俺は母さんの作った甘くなく、かと言って辛くもない実に俺好みのカレーを口に運んだ。 だとか。 ──風呂上がり、妹にゲームをやろうといわれ、仕方なく俺は部屋を出た。 だとか。 ──漫画を読んでいた俺はふと時計に視線を移した。もう十二時だ、寝なければと思い俺はベッドに入った。 だとか。 こんなことを延々ととは言わないものの、二ページ三ページ、ヘタをすると四ページ以上に渡って書かれても面白くはないだろう。
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