第一章

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翌日のこと、鳴り続ける目覚まし時計の騒がしさに我慢の限界を感じた妹に無理やり起こされてしまった今朝は、最悪の形での寝覚めとなった。 フラフラと半分寝ている脳みそを働かせながら、制服に着替えて既に母が準備していた朝食をさっさと食べ終え、身支度を済ませて家を出た。 マイ自転車にまたがり、学校まで十五分弱自転車を走らせる。 少し日差しがキツい朝だったので、登校するのも一苦労だった。 そんな感じで登校を終えた俺は、教室で自分の席に座ってうつむいていた。 これは別に、友達がいなくてすることがないから寝たフリをしているわけではない。さすがに、そんな寂しいことはしない。 だったらなぜ、うつむいているのか。それは純粋に疲れたからだ。 一日で使用出来るエネルギー的なものがあるとして、それを登校だけで半分以上使ってしまった気分だ。 そんな状態で、朝の先生の話を聞き流してやり過ごしていると、先生の唐突な提案が教室内を静まり返らせた。 「……さて、席替えでもするか」 そんな軽々しく、夕食を食べた後に軽くテレビでも観るかと言うような調子で、言ってしまっていいような提案なのか? 席替えって言うのは、思っている以上に時間がかかるものなんだぞ。 いちいちまだ分かりもしないのに、引いた紙の番号を無駄に教えあう奴ら。 それから、ベラベラと羨ましいだとかラッキーだとか喋りながら移動する奴ら。 移動後は周りの生徒を確認して仲良くなれそうな奴を探し、話しかけ始める奴ら。 とにかく、先生は知らないんだろう。いや、教師生活何年かなんてことは知らないが、そこそこやってそうな雰囲気を出しているんだから、それくらい分かっているはずだ。 「席替えというのは、ワクワクするもんだ。私も学生時代大好きだったんだ」 ……ただの席替え好きなんだろうか。
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