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「……」
綾瀬川は戸惑ったような表情を見せて、見られたくないようなものを見られた子供のように視線を泳がせる。
「わたし、あなたを知ってるような気がするんだけど」
何か確信を得たように、眉をつり上げて大きく開いた目で俺を見てくる。
「……そうか。しかし俺はお前のことなんて知らんぞ」
「でもわたしは知ってる。というか、わたし達は同じ小学校出身だったはず」
同じ小学校出身? とは言っても、仮にそうだとして俺はこんな女と関わった覚えはない。それだけは確信を持って言える。
そんな奴を覚えているはずがないと、俺は思うのだがコイツは俺を覚えていると言う。
「確か、五年生と六年生……あと一年生も同じクラスだったような」
「よく覚えているな。まあ同じ小学校だったからって、何か俺に用があるのか?」
「ないよ」
即答かよ。
だったらなぜ話しかけてきたんだコイツは。ははん、さては何も考えずに適当に行動してしまうタイプなんだな。
「でも、話しかけない理由もないじゃない。せっかくの知り合い同士なわけだし。なに? それともわたしとは話したくないとか言うの?」
……前言撤回。
清楚だとかどうとか、そんなイメージを抱くとか言ったような気がするが、それは忘れてほしい。てゆーか忘れてくれ。
中身が見た目を裏切っている。という表現がコイツを表すには相応しいだろう。
「別にそんなんじゃねーよ。でもな、俺はお前のことを覚えていないし、つまり俺たちは別に知り合い同士ではないんだ」
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