0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前こそ、それが王女に対する態度か?」
お姫様の腕をひねり上げていた方の兵の首に、長剣の切っ先が突き付けられていました。
長剣の持ち主は若い男でした。
男はお姫様の左右にいる兵達に比べると細身で、中性的な綺麗な顔をしていました。
そんな男からは殺気にも似たオーラを放たれていました。
それを感じとった兵の顔がみるみるうちに青ざめてゆきます。
それと同時に、お姫様の腕を掴む手からは力が抜けてゆきました。
「....し、失礼致しました.....!」
右腕が自由になったお姫様はその手で左腕を掴んでいた兵を振り払うと、ヒーローのように現れた若い男の腕を乱暴に掴み、扉に向かって歩き出しました。
男は引っ張られながら振り返り、女王と二人の兵に軽く頭を下げると、そのままお姫様に引っ張られて行きました。
その間、お姫様が振り返ることはありません。
女王は、そんな二人が扉の向こうへ消えるのを、静かに壇上から見下ろしていました。
そして、そんな女王の瞳からは何も感じとれることはありませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!