その日の夜

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そうしたらもっと、楽しく過ごせるだろうに。 いや、人の生き方に口を出しちゃあダメか。 ………でもなぁ。 コイツは「命令を聞くことが良いこと。命令を聞かないことが悪いこと」と教えられて……、洗脳に近いのかな。 でも、せっかく考える脳もあるし力もあるのに。 容姿も悔しいことに、綺麗なのに。 絶対に損してる。 「よし、そんじゃあ服とタオル置いとくから!」 脱衣所のカゴに服とタオルをまとめて置いておく。 「わかった」 さっきっからそれしか言わねえな… 「…氷浦」 「………?」 服を脱ぎ始めた氷浦に話しかける。 「"ありがとう"って、言ってみ?」 「あり…がとう?」 怪しげに復唱する氷浦。 「そう、"ありがとう"」 氷浦の眼をみる。 感情の無く、人形のように温度の感じられない瞳。 けれど、今は少しだけだけど温かみを感じる瞳。
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