第一話/夏の始まり

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暑い。 ひたすらに暑い。 空は照りつく太陽が顔を出して大地を焼いている。 そんな気持ちになる。 今月…八月に入って間もないが、真夏日と言ってもいい。 それほどに暑い。 だが、更に憂鬱にさせてくれるのは目の前に広がった階段の山。 200段にも及ぶそれはまるで壁のように視界に入る。 ただでさえ暑いのに、これを見る度に体力は奪われていく気がする。 ー由苓町(ゆれいちょう)。 田舎と言えば田舎だが、バスも電車も通っている為にそこまで不便さはない。 駅前には小さいながらも、ショッピングモールもある。 この町の特徴を挙げるなら、神社や寺が比較的に多い事にある。 地形もやや高い位置にある事も特徴の一つであると言える。 それ以外は特別な不便さはそこまでない。 だが…由苓高等学校に向かう為の道は不便さを極めている。 何しろ、この山みたいな階段を登った先にあるのだから。 車で向かう場合はぐるっと大きく迂回して、行く事になる。 その道を歩くならこの階段を登った方がまだマシだった。
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