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登校したあとの教室は転校生の話題で持ちきりだった。
「コウ、おはよう。
転校生の話は聞いた?」
アユことアユムはいつものトーンの低い声で話しかけてきた。
「おはよう、アユ。
いや、さっき学校来たばかりで…。
皆その話で持ちきりだね」
自分の席に鞄を掛けながら返事を返す。
「どうも今日転校生がくるらしい。
それで皆浮き足だってるみたいなんだ」
「ふーん。
ちなみにその転校生は男子なの、女子なの?」
「さあね、もし興味持ったならあいつに聞いてみたら。
この転校生の情報もユカナから広まったものだろうし」
そう言って顔を向けた先には数人の生徒に囲まれたユカナと呼ばれた少女がペチャクチャと喋っていた。
と、今まで周りの連中と喋っていたユカナがこちらに向き直り、
「なんだい、マイフレンズ。
君らの頼みならたとえ大統領の秘密の隠し事であっても見つけ出して教えてあげるよ。
さぁ、言ってごらん」
両手を広げる彼女にヒラヒラと手を振り、
「いや、別段そんな用件はやって来そうにないかな。
その気持ちだけ有り難く頂戴しとくよ」
「そうかい、それは残念だ」
そう言うと、再び周りの生徒との雑談を再開した。
「聞けばよかったのに」
「アユ、あいつに貸しをつくること程恐ろしい事が他にあるだろうか、いやない…反語」
「はは…
あんま面白くないわ。
でも確かにユカナに関してはその通りかな」
「先生来たぞ」
クラスメイトの誰かの声に反応して自分の席に戻っていく生徒たち。
アユムも自分の席へと戻り、朝のホームルームは始まった。
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