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「まずはホームルームの前に転校生を紹介します。
入ってきなさい」
先生の言葉を合図に教室の扉がガラリと開いて一人の生徒が入ってきた。
小柄な女子生徒だった。
透き通った黒髪は腰にまで達する程に長く、一本一本がキラキラ輝いているように綺麗だった。
テクテクと歩いて入ってきた彼女は可愛らしい日本人形そのものだった。
ただ一点を除いては。
それは彼女の着ているものだった。
この中学校では、指定の制服がある。
そして、例外に漏れず彼女も制服を着ているには着ていた。
おかしいのは、その上に白衣を羽織っていることだった。
「ヤチヨです。
よろしく」
彼女の自己紹介は簡潔だった。
そして彼女の特異な服装と、淡白な性格、あわせて転校生ということも合わさり、転校初日早々彼女のクラスでの立ち位置は決定付けられた。
つまり除け者。
初めの授業の合間に好奇心から話しかけようとしたものもいたが、ヤチヨが始終無言を貫き、昼休みになるころには話しかけようとするものは一人もいなかった。
本日最後の授業が終わり放課後になると、彼女はすぐさま家路へとつき、クラスメイトとの溝は深まるばかりであった。
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