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それから残りの授業は、屋上の一件が気にかかりまともに受けることが出来なかった。
「放課後だぞ」
「あっ…うん」
アユムの言葉にも、心ここにあらずのまま空返事で答える。
「そんなに気にかかるのなら、泣かせたこと謝りに行けよ」
あれからヤチヨは何事もなかったかのように授業を受け、何事もなく今も帰り支度を終え、教室から去ろうとしている。
「ほら帰っちゃうぞ」
アユムはそう言って、コウの背中をぽんと押し、その勢いのままヤチヨの前に進み出る。
「えっと、あの時はごめんなさい。
ただヤチヨちゃんと話したかっただけだったんだけど…」
最後の方は小さくなっていく言葉をヤチヨは最後まで聞き、
「気にしてないから、大丈夫。
ありがとう。
でも、私と仲良くしてるとあなたまで無視されちゃうから…」
そう言って、コウの横を通りすぎ教室を出ていった。
何も言えずヤチヨを見送るコウ。
「謝れたか?」
「うん、気にしてないって。
あと、ありがとうって」
アユムは「そうか」と答える。
「それで、自分にはもう話しかけるなって。
僕まで除け者になるからって…」
「そうか」
アユムの言葉はそれだけだった。
コウも呆けたように立ち続けるしかなかった。
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