#.26 白日のもとに

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   本当は、こんなことやたらと言うものではない。だが――、 「あー、分かった分かった! もーいっぺん、だけだからな」  ふっと肩を落とし息をついた瞬矢は、小柄な茜の身長と自分との身長差を埋めるべく、前のめりに少し屈む。 「俺は、お前のことが――」  言葉を紡ぐ唇に触れた柔らかな感触が、言いかけた台詞の続きを塞いだ。 「――!」  あまりにも突発的な出来事に、瞬矢は驚き目を見開く。  春風に、栗色の羽を靡かせ唇に蝶がとまる。襟元を掴み寄り添うそれは、軽く触れるだけのもの。  触れていた体と唇が離れると、茜は恥じらうように頬を紅潮させ口元に手を添える。そして視線を逸らし目を伏せ、俯きがちに呟く。 「……やっぱり、その言葉は取っておいて。重みがなくなるし、薄くなりそうだから……」  にわかに頬を染めたまま、同意を求めるかの如くちらっと瞬矢を見上げた。ひらひらと舞う花びらが茶色い髪に着地し、淡いピンクを彩る。  心拍が大きく一度跳ね上がると共に、彼女もまた同じことを思っていたのかと頬を緩める。 「ばーか、俺だって初めっからそのつもりだ」  
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