#.02 亡霊からの手紙

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   ――20XX年 4月5日。  瞬矢は1人、パソコン画面に向かい情報を集めていた。  画面から目を離し、ソファにごろりと寝転がる。  あれから4日。得られた情報は、茜から聞いた父親の名前が『東雲(しののめ) (あきら)』ということ、そして製薬会社の社長だったというわずかなものでしかない。 (今のところ手掛かりになる人物といえばこの『中川 昭夫(あきお)』という男なんだが……。……駄目だ。少し休もう)  左腕で視界を遮ると吸い込まれるように眠りへと落ちていった。  ――真っ暗な視界の中に、ぼんやりと影が浮かび上がる。――黒髪の少年だ。  少年は白いシャツに茶色のハーフパンツ、そして襟元には細長いリボンが結わえられていた。 「……――」  ぼやけた視界に映る少年は笑顔で何かを言い、すっと左手を差し伸べる。 (誰だ? お前は……)  なぜかとても懐かしいような気がして、差し伸べられた手を取ろうとした時、現実へと引き戻された。顔を覆う腕を滑らせると、指の隙間から光が差し込む。 「おー、やっと起きた!」  そこは、見慣れた部屋のソファの上で、背凭れ越しに笑顔でこちらを覗き込む茜の姿が目に映る。 「あ、ピンク……」  
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