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瞬矢が彼女を見て発した第一声。これには茜も黙っていなかった。
「『あ、ピンク』じゃないし! そんな戦隊ものみたいな呼び方ごめんだから!」
(そうか、今日はピンクじゃないのか……)
だがそういう問題ではない。
彼女は立ち上がって眉をつり上げ、怒り心頭といったご様子だ。だが当の瞬矢は、声を荒らげ憤慨も露な茜の台詞をさらりと受け流す。
「まぁまぁ。てかお前、いつの間に……?」
瞬矢は何か酷く懐かしい夢を見ていたような、そんな気分で両の瞼を擦る。それは、目覚めても尚、止まないものだった。
「30分くらい前。それよりほら瞬矢、手紙きてたよ」
呆れ返ったようにそう言うと、茜はごくありきたりな茶封筒に入った手紙で、長めの黒い前髪に隠れた瞬矢の額をぺしぺしと小突く。
「だぁーっ! 分かったからやめろ!」
その手紙を鬱陶しそうに払いのけ、のそりと起き上がる。
「つか、なんで呼び捨て?」
「いいじゃん、堅苦しいの嫌だし」
それにしても砕けすぎじゃないか――あっけらかんと答える彼女に対して内心ごちたところで時刻を見ると、部屋の掛け時計は、もうすぐ午後3時を示そうとしていた。
「……あれっ?」
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