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『20XX年 12月21日。
数ヶ月ほど前から屋敷に出入りしている男。明らかに日本人ではない。
この計画は、もう外と通じてしまったのだろうか。
このことを報告したが、本部は何も言ってこない』
『この実験はどこへ向かうのか?
いつか我々は、この報いを受けるだろう。
願わくば彼らの未来に光あらんことを――』
内容はそこで途切れていた。
全てに目を通したところで、瞬矢の脳裏に、先ほど記述されていた丸印に『外』という単語がよぎる。
改めて瞬矢は思う。間違った形かもしれないが、少なくとも初めは『人』として造り出され、愛情を向けようとしてくれていた。
〈そうだろ? ……刹那〉
届くかどうか分からない。だが眠り続ける刹那に向けて、そっと思念を送った。
一瞬だが、刹那の表情に穏やかなものが窺えたのは気のせいだろうか。
よもやそれは、窓辺から差し込む麗かな陽気のせいなのかもしれない。
窓辺から吹き込むそよ風にカーテンが揺らぎ、瞬矢は晴れ渡った空へと視線を送る。窓の外では、季節外れの黒い揚羽蝶がひらりひらりと宙を游ぐ。
「ほんと、いい天気だ……」
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