プロローグ

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大きな屋敷。誰が見ても豪邸と言いそうな大きな屋敷の一室で、一人の男が焦るように落ち着きが無く椅子に座っていた。 思わず威圧感を感じそうな男だが、今はそれすら感じさせない程に焦っていた。 何があったかと言えば、この男の妻が子供を産むようで、それを待っているのだ。 「まだっ……まだ産まれんのかっ!?」 「まぁ、そう焦るな霧弥。もうじき産まれてくる。」 霧弥とは、この焦っている男の事で、霧弥の父親らしい人物が呆れるように霧弥に言う。 「ですが父上、「咲-サキ」の時とは違って男の子なのですよ。焦りもします。」 彼は落ち着いているようだが、霧弥は落ち着く気配が無い。 咲とは、既に生まれている長女の事で、今から産まれてくる男の子は咲の弟という事になる。 「焔の当主ともあろうものが情けない。騒ぐと迷惑になるではないかっ!!」 焔(ほむら)とは、五大貴族と呼ばれる王族に次ぐ権力を持つ貴族の事。 つまり霧弥は、焔の現当主という事になる。 霧弥の父、厳造の言葉を聞くと、霧弥は静かに口を閉じて時を待った。 それから約一時間が流れ、赤ん坊の泣き声が屋敷に響き渡った。 「生まれたかっ!!」 霧弥は勢い良く立ち上がり、妻の待つ病室へと駆け出した。
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