71人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじゃましまーす」
柏原の家はわたしが住んでいるマンションの隣にある小さなアパートだった。
「意外と綺麗じゃん」
リビングの奥に小さな部屋が1つ。
そこに大きく貼ってあるポスターはいま絶大な人気を誇る、ベテラン俳優が写っている。
それは柏原が尊敬しているから貼っているのかただ仲良しだから貼っているのかは、わからなかった。
「さて、作るか」
柏原の好きな食べ物なんて知らないから、とりあえず男の子が好きなカレーにした。
「ってゆーか、わたしの得意料理だからなんだけど。へへ」
作り始めると過ぎる時間はあっというまでもう8時だった。
「できたっ!」
火を止めてリビングでひとやすみする。
突然、携帯が鳴って驚いた。
『飯富美苑』
いつもわたしはメールなんだけど、美苑はいちいち打つのが面倒だから電話で用件を済ませるタイプ。
「はい」
『もしもしぃ?蒼花ぁ?』
「うん」
『なんだっけ、えーと、柏原竜!
次の月9に決まったらしいよ!』
「月9っ?」
『もう撮影してるらしい!
さっきテレビで特集やってた!』
「すごいっ!
あとで帰って来たら聞いてみる」
『は?』
また、口が滑った。
いまわたしが柏原の家にいることは一応、2人だけのひみつだった…はず。
「あした詳しく話す!じゃあね!」
『ちょっ、蒼花ぁ!』
ブチッ
あした、大変なことになるのを想像したら背筋がゾッとした。
.
最初のコメントを投稿しよう!