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休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「あ、これ」
誰かが声をかけてきた気もしたけど美苑が強引に手を引くから振り返ることもできなかった。
「柏原ーっ!」
「なに」
「なに、じゃなくて帰るの」
「…」
柏原と友達になって気づいたことがあった。
…それは友達が重要だってこと。
「あれ?」
「…」
「ない」
「は?」
「ないの、わたしの大事な本が」
「本?」
おばあちゃんがくれた本。
大事にしてた本だったのに。
「休み時間、持ち出してた」
「…へ?」
もう1度だけ聞き直す。
どういうこと?って。
「親友に見せに行ったんじゃないの」
「それだっ!」
たしかにわたしは休み時間、美苑に本を見せに行った。
でもそこにまさかの三門先輩が登場してどこかに本を置いてきたか、落としてきたってわけ。
…やっちゃった。
「誰か拾ってくれんだろ」
「そうだよね」
柏原が親身になってくれたことに驚いた。
わたしはよく、柏原のギャップに驚かされる。
すごく冷たいから小さな優しさを大きく感じていた。
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