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「栗田!
いろいろ教えてやってな!
たしか、栗田と家も近かったはずだから!」
「はい」
でもわたし、あることに気がついた。
…この人、どこかで見たことがある。
そのときだった。
クラスの一部がざわつき始めたのは。
「あれ、テレビで観たことあるよ」
「だよね?超かっこいいじゃん!」
「名前は、えーと」
やっぱり。
この人は多分、俳優かなんかだ。
それにしてもこの人は、とてつもなく冷たい目をしている。
「かしわばら、くん?」
「……」
まさかの、シカトですか。
「あのさぁ」
「はいっ」
その声は驚くほど低くて冷たい。
「名前、違うんだけど」
「……へ?」
なに、いまの。
かしわばら以外に何があんのよ。
「ごめんなさい」
「かいばら、覚えて」
「は、はい」
少し怒っているようにも見えたけど『覚えて』が妙に優しく聞こえた。
ってゆーかその前に。
わたし、バカすぎてとうとう“柏原”も読めなくなっちゃったわけ?
「柏原竜…」
「なに」
「いや、なんでも。
あっ…今日この町とか案内するよ」
「サンキュ」
ってそれだけ?
本当にテレビで観てた印象と違うんですけど。
こうしてわたしは、この謎の超美形男子と深く関わっていくことになってしまうのだった。
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