わたしの憧れは、

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わたしの憧れは、三門幸助先輩。 この高校ではファンクラブがあるほど学校一のイケメン男子。 「三門先輩っ」 休み時間になれば、三門先輩の周りには女の子たちが集まっているから、わたしが近くに寄る隙間もない。 だから今日も遠くから見つめる日々。 「あーおかっ」 「美苑?」 わたしにはクラスに1人も特別な仲の良い友達がいない。 隣のクラスに幼なじみの親友がいるだけだ。 ーー飯富美苑 休み時間はほとんど一緒に過ごすこが多い。 それにわたしは内気な性格だから頭もそこそこ良い方だと思われがちなのだ。 英語のテストは12点だった。 なのに喋ったこともないようなヤツは、 「蒼花、点数そこそこ良かったんでしょー」 とかなんとか言ってきたり。 その度に嫌な気持ちになる。 「これ、落ちてるよ」 「…へ?」 考え事をしていたわたしが不意に落としていたハンカチを拾ったのは、憧れの三門先輩。 顔が近くにありすぎて、言葉もでない。 「蒼花ちゃんだよね。 考え事してるとき、口がへの字になってるよ」 「……」 「じゃあね」 「……」 なんで、わたしの名前。 口がへの字…? 「蒼花!やったじゃん! ついに三門王子との初会話がっ!」 「やだ、への字だった?」 「顔、あかーい! への字じゃないよ」 このときのわたしは柏原に町の案内をすることも忘れていた。 .
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