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「ねぇ……アレ、見える?」
左手を上げ、線路の交わる場所にボンヤリ浮かぶポールを指差すと、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった汚い顔がそちらを向き、ガチガチと歯を鳴らしながら縦に動いた。
「アレ、何だか分かる?」
今度は左右に動いた。
「そう。なら、教えてあげる。
もうすぐここを無人のトロッコが通るの。あ、安心して。『ここ』って言っても、真ん中の線路。貴方が這いつくばってる“ここ”じゃ無いから。
でもね……あのポールを倒して、トロッコの通るの線路を変えると……」
「やッ! やめッ! たふけてッ!」
男は自分の運命を察して、醜く懇願してきた。
気持ち悪い……
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