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……一体どうなってるんだよッ。
キィィィィィィン――――――
キィィィィィィン――――――
金属が金属を擦れる不快な音が響く。
希は階下から階上に伸びる階段に視線を移した。
女生徒の霊がカッターナイフの刃を手摺りに擦りながらゆっくりと降りてきていた。
その形相はまさしく般若の如し。
両目はそれぞれ斜め四十五度傾斜し、こめかみの方まで長く切れ込んでいる。
キィィィィィィン――――――
一階には降りれない正面は塞がれている。
どうしても逃がさないつもりか。
『キイッヒッヒィ…探シ、探シ物見ツケタ』
額から汗が流れ落ちる。
落ち着けっ、取り敢えず冷静になるんだ高山 希!
状況を整理するんだ…
エア・シャフトは上の階に落として来てしまった。
あの霊を浄化するには丸腰がじゃ無理だ。
つまりエア・シャフトを取りに行くのが先決。
だがどうする?
正面の階段を使って、あいつの横を抜けて行く?
……………無理だ。
なら元から選択はただ一つ。
希は目一杯息を吸い込み―――
「ついて来てみやがれッ!」
―――――反対側の階段を使うしか無いッ。
キィィィィィ………―――
カッターナイフの刃が止まったと同時に走りだす。
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