第1話:漆黒ノ少女

15/19
前へ
/70ページ
次へ
……身体中が痛い。 瞬間移動なんて反則だろッ。 「プッ!」 口内で唾液に混じった血を吐き捨てる。 「明日掃除しに来る事務員さんが驚くぞ、これ」 辺りに散乱した机や椅子を見渡してから、扉があった場所を睨み付けた。 古ぼけたセーラー服の霊。 それがそこでゆらゆらと揺れて立っている。 意地でも生きて帰さないつもりか。 「はぁ、やっぱ引き受けるんじゃなかった」 聞こえたか親友よ。Lチキ二つじゃ全然割に合わないよ。 希はゆっくりと机と椅子の山から教室の後ろ側の空いたスペースへ。 女生徒の霊も希が動くのに合わせて教室内に入ってくる。 互いに静かに睨み合い、戦闘再開。 『ギィィィィィィヒィッヒィィィ!!』 目にも止まらぬ速さで駆け寄って来てはカッターナイフを縦横無尽に振りまくる。 太刀筋なんて存在しない、標的を如何に無惨に殺傷出来るか。 希もファイティングポーズを構えながらカッターナイフの軌道からギリギリで躱していく。 と言うよりギリギリついていけている状態だ。 現に希の制服の所々にカッターで切られた穴やほつれがある。 耳を削ぎ落とす一閃を左側に避けて床に転がる。 瞬時に体勢を立て直して、女生徒の霊のふくらはぎ辺りに足払いを決める―――――が。 「固ッ!?」 倒すどころが自分の脚が痺れて悲鳴を上げる。 まるでコンクリートを蹴っているみ――――― ドゴォッ。 「――――――ァッ」 女生徒の霊の右足が希の腹部にめり込んだ。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加