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眼前すれすれまで振り下ろされたカッターナイフを見て、死を覚悟した時。
頭上から凛とした声が響いた。
「―――――避けてっ!」
……避ける?そんなの無理だって。
しかしその声を聞いた途端に、全身の感覚が復旧した。
襲い来る激痛。
「―――――ッッ!」
その走り抜ける激痛で言う事を聞かない身体を気力で捻って、カッターナイフの軌道から数ミリ外れる。
そして一閃。
それは女生徒の霊によって振り下ろされたカッターナイフのではない。
希はベランダの湿った床に倒れながらもその一部始終が見えていた。
黒色のマントを羽織った少女が空から振ってきた――――
その淡い白雪のような華奢な手には、少女の身丈に合おう筈が無い巨大な鎌が握られていた。
怪しき光を放つ漆黒の大鎌を。
少女は空中で一回転して、慣れた手つきで大鎌を振り回し。
「………はあっ!…」
女生徒の霊を頭部から股部まで一刀両断して、ベランダに着地した。
『グィギゥギギギィゲ…』
縦に真っ二つになった女生徒の霊は聞き取る事が出来ない叫び声を上げて、大気に混じるように消えていった。
俺はその一連の光景を目を皿にして見ることしか出来なかった。
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