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――――AM 01:06
【天成学園高等部東校舎?階】
「はぁッ…はぁッ…ッん!」
夜も深まる深夜の校舎。
俺こと高山希は普段なら絶対に有り得ないであろうこの時間帯に。
当たり前であろう人が誰一人といない閑静な廊下を全速力で駆けていた。
そりゃあ、もう必死にだ。
「………ふッ!」
方向転換して、角を曲がる。
運動部の賞状や楯、トロフィーなどが陳列したショーケースを横切る。
一応弁解をしておくと、俺には勿論深夜の校舎を一人で訳無く走り回るなんて奇異な趣味は持ち合わせてなんかいない。
頼まれたってやるもんか。
じゃあ何で実際やってるんだ?と聞かれたら、俺は溜め息混じりこう言おう。
『アイツにやらされてるんだ』ってな。
希は走りながら後ろを振り向く。
さっきの踊り場辺り。窓から入る月の光の陰からそれは現れた。
古ぼけてボロボロのセーラー服を身に纏った女子生徒。
うん、ここまでならまだ。
両目はそれぞれ斜め四十五度傾斜し、こめかみの方まで長く切れ込んでいる。
…………寝不足ですか?
青白く細い右手には刃こぼれしたカッター。
………………
そして頭部の右側が凹に陥没し、ざんばら髪を振り回しながら追い掛けて来ているのだ。
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