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さっきと打って変わった態度で、お味噌汁を啜りながら聞いてくる。
やれやれ。悠め、あれほど未來には言うなって釘を刺したのに。
俺は肩をすくめ、未來特製玉子焼きに舌鼓をうってから昨夜の事を話す。
怪我についての件もあるのでざっくばらんとはいかないけど。
「希が言うその子って、もしかして真条さんの事じゃない?」
真条?心当たりの無い名前だけど。
俺は心に浮かべた事と同じ台詞で返事をした。
「嘘っ?知らないの?」
「おう、初めて聞いた名だなと」
未來が驚いたように俺を見る。
そんな顔されても聞いた事ないんだもの。
未來はふぅっ、とわざとらしく息を吐くと淡々と説明し始めた。
「ほらっ、入学式時、新入生代表挨拶してたあの子よっ。
入学試験も全教科満点近い点を取ったんだって、この前の中間試験でも学年一位!」
我が事のように人差し指を掲げる。
「その功績は学業だけに留まらず運動神経も抜群!期待の一年生だって校内じゃ相当有名なのよ」
その有名な生徒を微塵も知らない俺って。
「そんな子居たんだな。下の名前は?」
「確か…彩音。真条彩音さんって言うの」
「ふぅん、真条彩音さんねぇ」
やっぱり憶えが無い。
ズズズと食後にと入れたインスタントコーヒーを啜った。
「でもそんな有名な子が深夜の学校で大鎌を振り回して霊を除霊なんてな」
想像し難いもんだ。
俺は心中でそう付け足した。それと同時に実際一度会ってみるか。
そう決めた。
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