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「済ましてから食べようかなと思ったんで」
「ふむぅ、分かったよ~」
フォークに巻いていたパスタをチュルル~とまた爽快に口に入れて、空いた片手を俺に差しだしてきた。
どうやら渡しての合図らしい。
俺は、どぞ。と言葉を切って原稿用紙を手渡す。
氷河先生はそれを受け取ると、フォークを口に咥えて両手で原稿用紙を持って読み始めた。
時折、ふんふんと頷いて眉根を寄せたりする動作が童顔を余計に映えさせる。
腕組みをしてフォークを咥えた口をつーんと尖らせて数秒。
「字数も良いし内容も……うん、よし」
そう言って氷河先生は俺が提出した原稿用紙を引き出しにしまった。
「オッケーですか?」
「上出来、上出来~。修正の必要は無いかな」
俺は内心で安堵の一息をついた。
これで再提出と言われたら面倒この上無いし。
俺は軽く一礼して踵を返そうとした、その時だった。
ガラリと職員室の扉が開き、作業服を着た男性が二人入室してきた。
腰にはドライバーやレンチ、見た事無いような工具が詰まったベルトをしている。
その二人に中肉中背の眼鏡をかけた教諭が出迎えて何かを喋っている。
「どしたの高山君?」
「え、いや。何で業者の方がと思いまして」
頭の中で、ふっと昨晩の出来事が三倍速で再生される。
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