第2話:真条彩音

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コーヒーか…爽やかに炭酸か。 ………うん。深く考えててもしょうがないな。 何となく目に入った微糖の美味しそうなコーヒーを購入。 緑色に光っているボタンを押すと同時にガコンと音を立てて落ちてくる。 俺は屈んで、取り出し口からコーヒーを取り出した。 ん? ふと気付くと入り口に誰かが立っている。 俺は「よっ」と爺くさい所作をして立ち上がり、改めて出入り口に視線を向けた。 「…………あ…」 思わず間抜けた声を洩らす。 そこに立っていたのは見た事のある女子だった。 ――――――『大丈夫?』 凛とした透き通った声。 空から降ってきて、息もつかせぬ速さで、あの悪霊を浄化した。 漆黒のマントを翻して俺の前に現れた少女。 紛れもない。この人は。 ―――――――真条彩音。 本人だった。 滑らかな黒髪のボブカット、前髪から覗かせる端正な線の細い顔立ち。 昨日の夜現れた彼女で間違いがなかった。 彼女は薄く笑みを浮かべて俺の元に歩み寄ってくる。 …………緊張して声出ねぇ。 彼女との距離はどんどん縮まっていく。 腕を軽く伸ばせば触れてしまう距離で彼女は立ち止まった。 今気付くと彼女は俺の顎辺りぐらいの背丈。 昨晩はマントを羽織っていたから分からなかったけど、ブラウス姿の彼女は以外にも華奢で細身だった。 俺は息を呑んだ。 自分でも何で緊張しているのか分からない。 彼女は微笑んだままゆっくりと口を開いた。 「こんにちは。高山希君ですよね?」 俺は返答の代わりに黙って頷いて。 「……君は真条さん…だよな?」 「はい、そうです!」 真条は大きく頷いた。
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