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『次のページ開いて~。重要表現をいくつか説明するよ~………』
氷河先生が教科書を掲げて指示している。
俺も他の生徒と同じように教科書を捲った。
頬杖をついて開いたページを何の気なしに眺めた。
『このページからは比較級に入ります。予告してたから皆予習してきたよね~?』
………当たらない事を祈ろう。
シャープペンシルをノックして芯を出して、氷河先生が比較級について書いている解説を写す。
黒板を書くのをやめ、再び説明に突入すると、俺もシャープペンシルを手元に置いた。
授業終了まであと5分。
長いような、短いような。
この調子ならあとは板書無しで行くだろう。
手持ちぶさたになったので、教室内を目だけで見回してみる。
高梨さんは真剣に、氷河先生が何かを言うたび頷いている。
未來も悠も高梨さん程とはいかないが、それでもこうしてる俺よりかは幾分真面目に授業を聞いている。
俺は再び手元の白紙のノートに視線を落とした。
聞きたい事は沢山ある。
何で俺を知っているのか、何故昨晩あの場に現われたのか、それと怪我の消失の事。
そしてあの悪霊を浄化させたあの力。
「う~ん」
俺は口の中で唸るように呟いた。
分からない、が。
兎に角、真条彩音に指定された所へ行けば分かるだろう。
………帰りは遅くなりそうだな。
シャープペンシルを指の間でくるりと回した。
数分後、終業のチャイムが鳴り響いた。
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