43人が本棚に入れています
本棚に追加
階段を上がりながらライトをしまい、ホルスターからエア・シャフトを抜き。
サブポケットから純鉄が込められた予備弾倉【マガジン】を取り出す。
それを空の銃内部にセットし、薬室【チェンバー】に装填。
撃鉄【スライド】を引いて安全装置を解除。
これでいつでも功・迎撃が出来る。
二階に上がると一階同様左側に男女のトイレがある。
正面はT字に左右に廊下が伸びている。
湊によれば階段上がって左らしいから、左に曲がる。
両手でエア・シャフトのグリップを握り、右人差し指をトリガーにかけながら廊下を進んでいく。
それと同時に徐々に厭な感覚が強くなっていく。
仄暗い廊下の先が月明かりに照らされて、進む度に前方が見えてくる。
そして10数メートル先に見えた特別教室の前に、窓に背を向け扉を見つめるようにしてそれは佇んでいた。
――――美術部の倉庫前に現れる女生徒の霊。
辺りは暗いのに、その女生徒の姿だけは制服の皺まではっきりと分かる。
あの子か…………
髪はざんばらのショート。他校の少しぼろぼろのセーラー服を着ている。
青白く生気の無い顔は、美術部の倉庫の扉をただ凝視して立ち尽くしているのだ。
…他校の生徒の霊ってのが気になるけど……むぅ。
頭部の右側、そこが陥没して頭蓋骨の一部がはみ出している。
……害は無さそうだけど…うん、確かに怖いだろうな。
希は女生徒の霊から見えないようエア・シャフトを背に隠しながら近付いた。
「えっと…こんな時間にどうしたのかな?」
俺が出来るであろう最大限の笑顔で話し掛ける。
最初のコメントを投稿しよう!