第1話:漆黒ノ少女

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階段を上がりながらライトをしまい、ホルスターからエア・シャフトを抜き。 サブポケットから純鉄が込められた予備弾倉【マガジン】を取り出す。 それを空の銃内部にセットし、薬室【チェンバー】に装填。 撃鉄【スライド】を引いて安全装置を解除。 これでいつでも功・迎撃が出来る。 二階に上がると一階同様左側に男女のトイレがある。 正面はT字に左右に廊下が伸びている。 湊によれば階段上がって左らしいから、左に曲がる。 両手でエア・シャフトのグリップを握り、右人差し指をトリガーにかけながら廊下を進んでいく。 それと同時に徐々に厭な感覚が強くなっていく。 仄暗い廊下の先が月明かりに照らされて、進む度に前方が見えてくる。 そして10数メートル先に見えた特別教室の前に、窓に背を向け扉を見つめるようにしてそれは佇んでいた。 ――――美術部の倉庫前に現れる女生徒の霊。 辺りは暗いのに、その女生徒の姿だけは制服の皺まではっきりと分かる。 あの子か………… 髪はざんばらのショート。他校の少しぼろぼろのセーラー服を着ている。 青白く生気の無い顔は、美術部の倉庫の扉をただ凝視して立ち尽くしているのだ。 …他校の生徒の霊ってのが気になるけど……むぅ。 頭部の右側、そこが陥没して頭蓋骨の一部がはみ出している。 ……害は無さそうだけど…うん、確かに怖いだろうな。 希は女生徒の霊から見えないようエア・シャフトを背に隠しながら近付いた。 「えっと…こんな時間にどうしたのかな?」 俺が出来るであろう最大限の笑顔で話し掛ける。
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