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そう声を掛けてから数秒して漸く俺の存在に気付いたのか、音無く首から上だけこちらを向いた。
『あなた…私…見える…の?』
紫色の唇がぼそりと動く。
「Stage‐9だしな。声だって一字一句鮮明に聞こえてる。
それで?他校の生徒ッぽいけど、どうしてこんな所に?」
希は説得が失敗しないよう早速話を切り出した。
『探し物見つからないの』
人類が言語の利便性においての大発明である句読点を無視した返答。
「探し物って大事な物なのか?
君は自分で死んでいる事を理解してるみたいだから言うけど。
遺品なら葬儀の際に一緒に火葬してもらったと思うけど?」
大体の浮遊霊はこれで気付いて成仏してくれるンだけど……
彼女は見る限り目当ては身辺の物ではないらしい。
『………何かが足りないの…』
「何か?一体それは何?」
『足りない何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か……』
「なっ?おいっ…どうしたんだ?」
『何カ、何カ、何カ、ナニ、ナニ、ナニ、ナニカッ……』
急に壊れたラジカセのように同じ言葉を繰り返しのかと思うとプツンと押し黙った。
月に雲がかかったせいで女生徒の霊の表情が暗闇に紛れた。
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