【Ⅰ】

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『―――よかった、来てくれて。』 翔はホッとしたように歩音に向かってそう言った。 『え~っと、………俺の事は知ってるよな?』 歩音はそう聞かれ、軽く頷いた。 『じゃ~、話は早いな。……俺と付き合って欲しいんだけど。』 “………えっ!?何言ってるの?この人。私の事、からかってるの?” 歩音がそう思っていると翔がまた口を開いた。 『からかってる訳じゃねぇ~から。真剣に付き合って欲しい。ずっとチャリ小屋から見てただろ?気になってた。』 “バレてたんだ。……でもこの人の言ってる事は本当なのか嘘なのかわからない。………それに…私が見てたのは拓兎君だもん。………どちらにしろ、断らなきゃ。” 歩音はそう思うと俯きながら口を開いた。 『……あっ…あのっ!?………ごめん…なさぃ。』 歩音は母親の遺伝?で男性恐怖症だったため、小さな声でそう言う事で精一杯だった。 『えっ!?』 翔は驚いた、断られるとは全く思っていなかったからだった。 『……えっ!?…何で!?嘘じゃねぇ~ぞ。マジで真剣なんだけど。』 翔の言葉に歩音は顔を上げて翔の顔を見た。 そしてその目を見た歩音は本当に真剣なんだとわかった。 『理由があるなら教えてくれ。』 “私の事、騙している訳じゃないみたい。それじゃあ私もちゃんと答えなきゃ。” 翔に言われ、歩音はまた下を向いた。 .
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