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『だ、だからなんだよ』
晴喜は一歩後ろに下がる。先程の緩んだ気持ちが締め上げられるような緊張感。
逃げろ、逃げろ、逃げろ
頭の中で何度も何度も唱えられるが、足か動かない。
『逃げるところが学校だなんて、やっぱり子供ね』
鼻で嘲笑う中村の態度に、微かに怒りがあるも緊張と逃げたい気持ちでいっぱいの晴喜。
『あなた一人ぐらいなら、さっきみたいに逃げれないでしょうね』
情けなさそうだし…と、中村の手が近づいてくるのに動けない晴喜。
『どちらさまかな?』
中村の真後ろにいたのは、渚の担任の苔(こけ)先生だった。
『……』
思いがけない救世主の声に、晴喜はダッシュで保健室に逃げ込んだ。苔は、やんわりと目と眉を垂らした優しいおじいちゃん先生だ。
『……いえ、…失礼します』
中村は早足で中学校を後にした。
『……はぁ、…はぁ』
『どったのハルちん?』
保健室に入るなり晴喜は、床にへたりこんだ。脱力。いまの晴喜にピッタリだ。
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