プロローグ

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今は夜。にもかかわらず、目の前に広がるのは鈍く光る赤。 その正体は町を焼き尽くす炎。 俺の視界には動くものはいなく、ただ死体が無数に存在するだけ。 そして生き残りはおそらく俺のみ。 俺は両親が異変に気づいたときに無理矢理押入れに隠され、生き延びた。 両親は死んだ。押入れからこっそり覗く俺の目の前で。 やった者の姿はよく見ていない。 けど、物音が聞こえなくなって押入れから外に出たとき、辛うじて生きていた父は言った。 やった者は"黒い仮面"をしていたと。 そして最期に俺に言った。 "強く"なりなさいと。誰にも屈することのない、強い男になりなさいと。 あの日、俺はただ泣くことしかできなかった。 大好きだった、両親や友達がいたこの町を目にして…。 そして、決意した。必ず誰よりも強くなってやると。 大好きだったこの町に……。 .
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