55人が本棚に入れています
本棚に追加
今は夜。にもかかわらず、目の前に広がるのは鈍く光る赤。
その正体は町を焼き尽くす炎。
俺の視界には動くものはいなく、ただ死体が無数に存在するだけ。
そして生き残りはおそらく俺のみ。
俺は両親が異変に気づいたときに無理矢理押入れに隠され、生き延びた。
両親は死んだ。押入れからこっそり覗く俺の目の前で。
やった者の姿はよく見ていない。
けど、物音が聞こえなくなって押入れから外に出たとき、辛うじて生きていた父は言った。
やった者は"黒い仮面"をしていたと。
そして最期に俺に言った。
"強く"なりなさいと。誰にも屈することのない、強い男になりなさいと。
あの日、俺はただ泣くことしかできなかった。
大好きだった、両親や友達がいたこの町を目にして…。
そして、決意した。必ず誰よりも強くなってやると。
大好きだったこの町に……。
.
最初のコメントを投稿しよう!