序章――英雄の末裔

4/17
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「あーいかわらず湿気た面してんな、ハーヴィス」 後ろから彼の肩に腕を掛け、後ろで纏めた髪を揺らしながら顔を覗き混んでくる黒髪の青年。 「‥なんだ、ヴァーズか」 「なんだとはとんだご挨拶だな?」 ヴァーズ‥ヴァーズ・フリアードが肩を竦めながら苦笑する。 「理由なく親友に話かけちゃ駄目かい?」 「今、この瞬間お前に話しかけられた時間が無駄になったから駄目だ。それに、お前と親友になった覚えはない」 「相変わらず、ひっでぇ言い様だなおい!」 ここまで邪険に扱われているにも関わらず、へらへら笑うヴァーズ。そんな彼にハーヴィスはイライラしていた。 ――なんでこいつはこんなに楽しそうなんだ? ヴァーズに会うと必ず思う事だ。 ハーヴィスからみたらただの能天気な馬鹿。しかし、実際ヴァーズは滅龍者としての実力がかなりあり、リーダー兼ムードメイカーのような立場の人物である。 それ故に、元々人を避けているハーヴィスにとって最も苦手としている人種の人物なのだ。 「事実を言ったまでだ。それよりも……肩から手を降ろしてくれないか?正直歩きづらい」 相変わらず冷めた表情でヴァーズの方を見る。 「へいへい。取り敢えず今日の任務、遅れんなよ!」 肩を1回叩いた後、手を振りながらハーヴィスの横を過ぎ去るヴァーズ。 「遅れるかよ」 小さなため息と共にそうハーヴィスは呟いていた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!