第四章

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中島side 今朝のグッティと井上のアレを見たとき、なんとなく、グッティも井上を心配して来たのだと分かった。 しかし何故そう思ったのかと改めて聞かれると、理由はこれといって思いつかない。 そう、ほんとうに「なんとなく」だったのだ。 「…まぁ、ようはアレだ。俺はグッティのこと良く分かってるってことだ。」 「え、なんかそれやだ。」 井上が何か言ったが、取り敢えずそういうことにしておく。 これ以上考えても、納得のいく答えが出るとは思わない。それに答えが出たとしても、それは俺にとって大変よろしくないものなような気がしてならないのだ。 「世の中には触れちゃいけない事もあるんだよ。」 「今日の中島はよくボケる。」 「べべべ別にボケてねぇよ。」 「わざとらしいわ。」 そう言いながら井上は愉快そうに笑う。どうやら緊張はだいぶほぐれたようだ。 「あ、そういえばさ、中島って翠太と知り合いだったの?」 「知り合いって程でもねぇけど。一回話したくらいだな、」 「またなんで。」 「…お前さ、松田の事ほんとに何も知らねぇんだな。」 従兄弟で同じ学校にいるというのに、この無知さ加減は一体どういう事なのか。呆れ半分に聞くと、井上は気まずそうに頬をかく。 「こっちにもちょっと事情がありましてですね…。」 「…それは、俺達には言えないことなんだな。」 「言え……なくもない」 「じゃあ言うか?」 間髪入れずにそう問うと、井上はひどく困った顔をしてみせた。 (……言えないんじゃねぇか。) 「まぁ、いいけど。」 今度は俺が言う番だった。 「…ごめんちゃい。」 「ちゃんと謝れや。」 言って、井上の頭を小突こうと手を振り上げた時 チン と、エレベーターの到着する音がした。振り返ると、今しがた到着したエレベーターが開き、そこから出てくる銀髪が見えた。 「あ、グッテ」 声をかけようとしたが、目の前の光景に思わず息を呑んだ。 グッティが、とてつもない形相でこちらに走って来る。
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