第四章

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頭を下げながら、謝罪の言葉を述べながら、自分でもこんな行動に出たことに少し驚いていた。取り敢えず、これだけは言うべきだと思った。 もちろん俺だけが悪いだなんた塵一つも思ってない。会長の俺に対する暴力は、持っている理由にしてはあきらかに度が過ぎたし、恨む理由にしたってはっきりいって逆恨み以外のなんでもない。 それでも、俺がこの人の初恋を踏みにじったのは紛れもない事実で。そしてことその部分に関しては、俺は無視できないでいたから。 だから、この決して重くない頭を深々と下げ、「ごめんなさい」ではなく「すみません」と、そう言ったのだ。 「…なにを今更…」 けれど他の人、特に会長からしたらそんなのと知ったことではない。先程よりさらに動揺した様なその声。しかし、少し落ち着きを取り戻したようなその声。 俺は顔を上げた。 「でも違うじゃないっすか、今大事なのはそこじゃないでしょ。」 「……っなにが言」 「今、俺たちにとっても、会長にとっても大事なのは、本田の気持ちでしょ。あなたが今までにどんな辛い状況で生きてきたかってのは正直俺には分かりません、俺庶民なんで。でもさっきも言いましたけど俺はあなたがどれだけ本田を思ってるかはよく知ってます分かってます。だったら、本田の事、考えましょうよ、本田の気持ちを考えましょうよっ…俺は、それが出来なくて傷つけちゃいましたけど、会長ならそらくらいやれるでしょ、てか、やって下さいよ。」 好きならなんでもしていい訳じゃない。そんな事を誰かが言っていた。俺もそう思う。けど、好きだから何でもしてあげたい、そう思うのは悪いことではないはずだ。 相手の気持ち考えてから、要はそれが大事だから。だから、ちゃんと考え欲しい。俺がいえたことじゃないってことは百も承知してる。けどそれでと、本田が大好きだっていうなら、会長にはそうして欲しいと思うから。 俯いた会長は、なかなか答えを出さない。必然、静寂がしばらく続く。 「会長」 その中で、中島が真っ先にしびれを切らした。
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