第四章

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「一ついいですか会長。」 いいですか、と聞きつつ一歩前に出て前に出て喋る気満々の中島。思わず半歩ほど下がってしまった。 「あなたの知ってる本田雄大は、生徒会辞めたからってあなたの所から居なくなるような、そんな人間なんですか。」 「…っ」 少し顔を上げた会長の目が見開くのが見えた。所謂効果覿面というやつだ。 「違いますよね。言っちゃ悪いけどあいつは馬鹿が十個つくくらいの馬鹿正直で、損得勘定で他人と付き合うとかしようと思ってもできないぐらい不器用だ。」 他にも、流されやすいとか巻き込まれ体質だとか、本田を褒めてるのか貶してるのか、どっちともとれない言葉を真顔で連ねる中島。 それでも (褒めてんだろうな) と、分かってしまうほど、声は生き生きとしている。本人は絶対認めないだろうけど。 「出来るわけないんですよあいつほんとは、誰かから離れるなんて。馬鹿だから、お人好しだから、素直で他人の許容範囲が無駄に広くて、ゆとり世代とは思えねえくらい真っ直ぐだから。」 ほんとは、というのは、俺から離れようとしてるあまりにもグダグダな今の状況から言っているのだろう。 「だから会長も雄大のこと好きになったんでしょ、いやよく知らなけど、でも、好きなんでしょ?…だったら、信じてやって下さいよ。あなたの大好きな本田雄大を。」 「……………っっ…」 以前から思っていたが会長は一体何を考えてるか結構わかりやすい。顔や態度にまことしやかに出るからだ。 今ももちろん例外でなく、会長の眉間にシワのよせられた顔には「迷ってます。」と間違いなくわかりやすく書いてある。そしてそれは、俺の勘が正しければ、俺たちにとって良い答えにかなり傾いている迷いだ。 会長は一度瞳を閉じた。 ほんとに黙って静かにそうしていれば、美しいし格好いい。グッティといい会長といい、この学校は本当に残念なイケメンが多い。 いや、本当に残念かどうかは (こらからの答え次第ですよ、会長。) 切り揃えられたように綺麗な並びの睫毛が添えられた瞼、それがゆっくりと、開いていく。
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