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あらゆる並行世界が存在した。並行世界が増え続けることにより膨張する世界の現状で、大きな意思は並行世界を重ねることで膨張する世界を抑止する道を選んだ。
カオスワールド――この世界はいつからか、そう呼ばれるようになった。あらゆる文明が織り交ざったこの世界、ある日人々は見知らぬ大地に立たされた。広がる大空、果てしなき大地、母なる命の源の深淵を称える海、世界の満たす恵みの太陽、静寂の安らぎを告げる月。
皆の目に映る世界のそれだけは元の世界の記憶と一致していた。だがビルも道路も車も消失し残されたのは素のままの世界であった。
だが人間は歩む生き物だ、それぞれの記憶を頼りに人々は文明を築いていった。多次元は存在しうる、そう唱えた学者もいた。しかし実際に次元が重なりあった世界に落とされ、どう歩むべきか、それは人々の判断に委ねられた。
幾多の血を流すこともあった、破壊と再生を繰り返しながら時は経ち、世界は進んでいった。最後の戦争から三十年、文明と棲み分けが決まりかけ、平和を唱える者達の政治的な判断が台頭するようになった現在――それがカオスワールドだ。
『今こそ目覚めよ――起き上がれ勇者――血潮を燃やせ――今こそ戦いの時――』
ガチャリ――
布団から手を伸ばし、アーキスは目覚まし時計のストップボタンを押した。
「う~む……」
布団から上半身を起こす、金髪の刈り上がった頭、大きな碧眼、二十歳過ぎの好青年それがアーキスの容姿だ。
のっそりとアーキスは立ち上ると洗面台の前に立った。顔を洗い、髪を整える。
部屋の中を見渡すと、質素な印象を受ける。洗濯機、掃除機、小さなテーブル、炊飯器、冷蔵庫。生活に最低限必要な物だけ揃えられた部屋だった。
「よし、男前」
鏡の前でにやりと笑みを浮かべる。
そしてタイマーをセットしておいた炊飯器から丼にご飯をよそう、大量のキムチを乗せマヨネーズをかけ、ハバネロのタバスコを大量に振りかける。
「いただきま~す」
米派の激辛党であった。
「ごちそうさま」
壮絶な朝食を済ませると、歯を磨きジャージに着替える。スーツは鞄の中だ。アパートの部屋を後にしてアーキスは駆け出す。
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