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会社までジョギングすることがアーキスの日課だった。会社まで決して近くはないが、体を鍛えるためである。そのためアーキスはジョギングを欠かさない。アーキスの務める会社の名はアースといった。頭に有がつく。潰れた雑貨屋を店舗としたこじんまりとした会社だ。しかしシャワー室がある。ジョギングでかいた汗を流すことができる。
アースは規模こそ大きくないが、何度か街を救う偉業を成し遂げている。そのためラクシアの街ではそれなりに名前が通っているのだ。
この街がラクシアが危機に落とされた際にアーキスは中心の一人として戦った。
アーキスの秘めたる力、変身。ヒーローレッドフォッグになることにより、戦闘力が跳ね上がる。仕組みは不明だが、囁かれた者はヒーローに変身できるのだ。その現象を宇宙の囁きといった。
ヒーローの他にも、サムライ、超能力者、ガンマンなどといった戦士がこの世界には存在しうる。
アーキスの務める会社の業種はトラブルバスターと呼ばれていた。合法な限りあらゆる仕事に人員を回すサービス業だ。
ラクシアは首都のヴェスパニに次いで栄えた街だ。だから繁栄につきまとう陰りも当然のように存在していた。人々が犯す犯罪、悪の組織による犯罪活動。そういった事件をトラブルバスターは警察から依頼を受け、トラブルバスターは捜査や解決を委託されることある。それは決して、珍しいことではない。
アーキスも様々な事件の依頼に遭遇した。仲間とともに挑み、ついた二つ名がアース特攻隊長だ。
朝露のアジサイを通り越し、出勤するサラリーマン、登校する学生をかき分け、アーキスはジョギングのペースを落とさず会社へと向かう。ビルの頭上にある太陽が顔を出し人々の営みは始まるのだ。
人々をかきわけるアーキスの瞳は真っ直ぐである。ひたすら自分の信じる道を突き進み、何事も全力で取り組む、それがアーキスという男だ。
「ん?」
見覚えのある後姿を確認して、足踏みを続けながら声をかける。
「なにしてるんだ?」
声をかけられた女性はビクッと背中を震わせ、振り返る。
「アーキスか……今いいとこなんだ、邪魔しないでくれ」
何故か食パンをくわえたまま、ローゼズは答えた。
「会社は?」
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