始まり

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「今日は非番なんだ」  ローゼズはアーキスと同じ会社に勤めている、つまり同僚だ。 「怪しいぞお前。通報されんぞ?」 「断じて怪しくない!これは『きゃっ!? 曲り角でぶつかって恋の始まり大作戦』だ!」 「なんだその恥ずかしい作戦」 「乙女の恋にたいするセンチメタルと夢が同居したネーミングだろうが! いい男と曲がり角で激突すると恋が始まるんだ! 本に書いてあった!」  半眼になったアーキスに構わずローゼズは、真剣な眼差しで曲がり角を凝視している。 「あ、あのカップル学生なのに手を繋いで歩いてる! チューしたのかなチュー」  ローゼズは彼氏いない歴二十年である。 「その作戦通らないぞ」 「いや、大丈夫だ。二度ほど挑戦して失敗したが、そのとき『いや~ん、遅刻遅刻』と言ってなかったんだ」 「そういう問題か」  ローゼズは肩をビクッと震わせた。 「いい男発見! うおおおっっっ! 遅刻ぅぅぅっっっ! 遅刻ぅぅぅっっっ!」  食パンをくわえたまま何かに憑りつかれたようにダッシュする。ローゼズを見送りアーキスはため息をついてから走り出した。
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