遠い…

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「おおぅ?おまえ新入りか?」 突如後ろから太いガラガラ声がし、驚いて振り向いた。 「……っ」 「何だ?おい、おまえら来てみろよ。向かいの棚のおなごが間違ってここに来ておるぞ」 「何?おなごがおるだと?どれどれ」 ガヤガヤと騒がしく4、5人集まって来た。 が、皆さん私の世界じゃ巡り会えない方々…体格は様々だが、顔つきが明らかに“萌え”などとは程遠い。 簡単な鎧のようなのを身に付け、長い槍や刀を持ってジロジロと上から下まで物珍しそうに私を見ている。 「花道様、いかが致しましょう?」 その後ろから短髪の長身でスラリとした男性が歩み出て私の前に立ち、直ぐ横を見た。 背中に刀を背負い、皆に比べると動きやすそうな格好をしている。 「久様が目測を誤り、ソヤツに用意した場所が合わなかっただけだ。じきに向こうへと移されるゆえ、騒ぐほどの話ではない。壱護、いらぬ詮索はするなと皆に伝えろ」 「はっ」 壱護と呼ばれた男は軽く私に頭を下げ後ろの男達の方へと向かった。 落ち着き凛とした声の主…花道様は、気づかなかっただけで、私のすぐ横で美しく黒い艶やかな馬に乗っていた。 適度に筋肉のついた体に、真っ赤な甲冑を身に纏い、刀を差し、髪を一つに束ね、キリリと涼やかな目元の端正な顔立ちをしている。 (すごく…カッコ…いい)
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